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1.

運転パフォーマンスに対する睡眠薬の残存効果の影響~ネットワークメタ解析

 睡眠薬には残存効果があり、運転中の安全性に悪影響を及ぼす可能性がある。イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のMichele Fornaro氏らは、不眠症患者における睡眠薬の残存効果と運転パフォーマンスへの影響を明らかにするためネットワークメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2024年4月号の報告。 2023年5月28日までに公表された、不眠症患者と健康対照者を比較した睡眠薬使用および運転に関するランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、EMBASE、TRID、Clinicaltrials.gov、WHO-ICTRP、Web Of Scienceより検索した。エンドポイントとして、車両の横位置の標準偏差(SDLP)、朝の最初の運転時における障害率を考慮した。バイアスリスクおよび不均一性(グローバル/ローカル)を測定し、エビデンスの信頼性を評価するためCINeMAを用いた。 主な結果は以下のとおり。・特定された4,805件のうち、クロスオーバーRCTをシステマティックレビューに含め、22件をネットワークメタ解析に組み入れた(健康対照者のみに焦点を当てた)。・単回投与では、ほとんどの薬剤は運転パフォーマンスへの影響がプラセボと同様であり、SDLPについてはゾピクロンを上回っていた。・対照的に、ラメルテオン8mg、daridorexant 100mg、就寝時のゾルピデム10mg、深夜のゾルピデム10mgおよび20mg、ミルタザピン15~30mg、トリアゾラム0.5mgは、プラセボよりも有意にパフォーマンスが悪かった。・レンボレキサント2.5~5mg、スボレキサント15~20mg、深夜のゾルピデム3.5mgは、ゾピクロンよりも機能障害が少なかった。・フルラゼパムを除き、反復投与(最大フォローアップ期間:10日間)により、残存効果は少なくなっていた。・異質性および不均一性は、ほとんど認められなかった。・エビデンスの信頼性は、「低」または「非常に低」であった。・感度分析により、主要分析の結果が確認された。 著者らは「FDAが承認したほとんどの睡眠薬は、承認用量において運転パフォーマンスへの影響がプラセボと同程度であり、ゾピクロンを上回っていた。15日以内の反復投与が残存効果を減少させる点については、さらなる研究が求められる」としている。

2.

再発性多発性硬化症、抗CD40L抗体frexalimabが有望/NEJM

 再発性多発性硬化症患者において、抗CD40Lヒト化モノクローナル抗体のfrexalimabはプラセボと比較し、12週時におけるT1強調MRIでの新規ガドリニウム(Gd)増強病変数を減少させたことが示された。フランス・リール大学のPatrick Vermersch氏らが、10ヵ国38施設で実施した第II相臨床試験の結果を報告した。CD40-CD40L共刺激経路は、適応免疫応答と自然免疫応答を制御し多発性硬化症の病態に関与する。frexalimabは第2世代の抗CD40Lモノクローナル抗体で、抗原提示細胞表面に発現しているCD40へのCD40Lの結合を阻害することによりCD40-CD40Lシグナル伝達経路を阻害し、T細胞を介した免疫応答を抑制する。著者は、「多発性硬化症患者におけるfrexalimabの長期的な有効性と安全性を明らかにするため、より大規模で長期間の試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。frexalimab 1,200mg静脈内投与と300mg皮下投与を、プラセボと比較 研究グループは再発性多発性硬化症患者を、frexalimab 1,200mgを4週間隔で静脈内投与する群(負荷用量1,800mg)、frexalimab 300mgを2週間隔で皮下投与する群(負荷用量600mg)、またはそれぞれのプラセボを投与する群に4対4対1対1で割り付け、二重盲検下で12週間投与した。投与経路は盲検化されなかった。12週後、全例が非盲検下でfrexalimabを投与した(プラセボ群の患者はそれぞれ対応するfrexalimabに切り替えた)。 主要エンドポイントは、8週時と比較した12週時におけるT1強調MRIでの新規Gd増強病変数。副次エンドポイントは、8週時と比較した12週時における新規または拡大したT2強調病変数、12週時のGd増強病変総数、および安全性であった。8週時と比較した12週時の新規Gd増強病変数はfrexalimab群で減少 2021年6月7日~2022年9月21日の間に、166例がスクリーニングを受け、129例が無作為に割り付けられ、うち125例(97%)が12週間の二重盲検期間を終了した。患者背景は、平均年齢36.6歳、66%が女性、30%がベースラインでGd増強病変を有していた。 12週時における新規Gd増強病変数の補正後平均値は、プラセボ群1.4(95%信頼区間[CI]:0.6~3.0)に対し、frexalimab 1,200mg静脈内投与群0.2(95%CI:0.1~0.4)、frexalimab 300mg皮下投与群0.3(95%CI:0.1~0.6)であり、プラセボ群に対する率比は1,200mg静脈内投与群0.11(95%CI:0.03~0.38)、300mg皮下投与群0.21(95%CI:0.08~0.56)であった。副次エンドポイントの結果は、主要エンドポイントの結果とおおむね同じであった。 12週間の二重盲検期間における有害事象の発現率は、frexalimab 1,200mg静脈内投与群29%(15/52例)、frexalimab 300mg皮下投与群45%(23/51例)、プラセボ群31%(8/26例)で、最も多くみられた有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は新型コロナウイルス感染症および頭痛であった。

3.

古代人のDNAから多発性硬化症の起源が明らかに

 英ケンブリッジ大学およびコペンハーゲン大学(デンマーク)教授のEske Willerslev氏を中心とする国際的な研究グループが、アジアと西ヨーロッパで見つかった中石器時代から青銅器時代までの古代人の遺物のDNA解析により、世界で最大規模の古代人の遺伝子バンクを構築。これを用いて、時代の流れの中で人々の移動とともに遺伝子の変異や疾患などがどのように伝播したのかを明らかにした。この研究結果は、1月10日付の「Nature」に4本の論文として掲載された。 このうち、ケンブリッジ大学動物学分野のWilliam Barrie氏が筆頭著者を務めた1本の論文では、中枢神経系の自己免疫疾患である多発性硬化症(MS)の有病率が、世界的に見て北欧で高い理由の説明となる結果が得られた。 Barrie氏らは、古代人の歯や骨のサンプルを用いたDNAデータと既存の古代人のゲノムデータを組み合わせて作成された、1,600人以上の古代人のDNAプロファイルに中世以降(11〜18世紀)のデンマーク人86人のゲノム解析データを加え、「白人の英国人」を自称する約41万人のUKバイオバンク参加者のDNAデータと比較し、現代人の遺伝子における古代人の遺伝子の影響を調べた。 その結果、MSの発症リスクに関わる遺伝子変異は、約5,000年前に東方からポントスステップ(現在のウクライナ、ロシア南西部、カザフスタン西部の一部にまたがる地域)に移住してきたヤムナ族と呼ばれる牧畜民とともにヨーロッパにもたらされたことが明らかになった。牛や羊などを家畜化していたヤムナ族は、動物を介した感染症罹患の脅威に常にさらされていた。このことを踏まえてWillerslev氏は、「ヤムナ族がヨーロッパに移住した後もMSのリスク遺伝子を受け継いでいたことは、これらの遺伝子が、たとえMSリスクの上昇をもたらすとしても、感染症から身を守る上で有利だったからに違いない」と話す。 Willerslev氏は、「このMSに関する発見は、遠い過去を見る以上のものをもたらす。この知見は、MSの原因に関するわれわれの見方を変え、治療法にも影響を与えるものだ」と強調する。一方、Barrie氏は、「これらの結果はわれわれを驚かせた。MSや他の自己免疫疾患の進化についてのわれわれの理解を大きく飛躍させる結果だ。われわれの祖先のライフスタイルが現代の疾患リスクに及ぼす影響を明らかにすることで、現代人がいかに古代人の免疫システムの影響を受けているかが明確になる」と話している。 4本の研究で明らかにされたそのほかの主な結果は以下の通り。 身長:北欧の人は南欧の人より背の高い傾向があるが、その違いの背景にもヤムナ族の遺伝子が関係している可能性がある。 他の疾患のリスク:南欧の人は古代の農耕民族のDNAを色濃く受け継いでおり、双極性障害のリスクが高い傾向がある一方で、東欧の人が古代人から継承した遺伝子はアルツハイマー病や2型糖尿病の発症リスクを高める可能性がある。 乳糖に対する耐性:初期の人類は、離乳後に牛乳を消化する(牛乳に含まれている乳糖を分解する)ことができなかった。成人での乳糖に対する耐性は、約6,000年前にヨーロッパで獲得された可能性がある。 野菜の摂取:菜食のみで生活する能力と耐性は、おそらく約5,900年前にヨーロッパで獲得された可能性がある。 1本の論文の筆頭著者であるコペンハーゲン大学グローブ研究所のEvan Irving-Pease氏はニュースリリースの中で、「過去1万年にわたるユーラシア大陸の人々のライフスタイルが、現代人の身体的特徴や多くの疾患リスクに関わる遺伝的遺産をもたらしたことは驚くべきことだ」と述べている。■原著論文Allentoft ME, et al. Nature. 2024;625:301-311.Allentoft ME, et al. Nature. 2024;625:329-337.Irving-Pease EK, et al. Nature. 2024;625:312-320.Barrie W, et al. Nature. 2024;625:321-328.

4.

第200回 非オピオイド鎮痛薬が米国承認申請へ

まずは急性痛第III相試験が成功本連載で2年ほど前に取り上げた依存やその他のオピオイドにつきものの副作用の心配がない経口の非オピオイド鎮痛薬が2つの第III相試験で術後痛を有意に緩和し、いよいよ米国FDAの承認申請に進みます1)。試験の1つには腹部の脂肪を除去する腹壁形成手術患者1,118例、もう1つには外反母趾の瘤(バニオン)を取る手術患者1,073例が参加しました。それら2試験のどちらでも米国のバイオテック企業Vertex Pharmaceuticalsの神経ナトリウムチャネル阻害薬VX-548の時間加重合計(SPID48)がプラセボを有意に上回りました。SPID48は点数が大きいほど48時間に痛みがより鎮まったことを意味し、腹壁形成手術患者と外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はプラセボ群をそれぞれ有意に48点と29点上回りました。しかしながら、定番のオピオイド薬との比較ではVX-548は勝てませんでした。腹壁形成手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬(ヒドロコドンとアセトアミノフェンの組み合わせ)より高めでしたが勝ったとはいえず、外反母趾手術患者の試験でのVX-548投与群のSPID48はオピオイド薬未満でした。オピオイド薬との比較は残念な結果となりましたが、第一の目標であるプラセボとの比較で勝利したことを受けてVX-548はいよいよ今年中頃までに米国FDAに承認申請されます。手術や手術以外も含む多様な患者へのVX-548の効果や安全性を調べた別の第III相試験の結果も踏まえ、急な痛みの治療薬として承認申請される予定です。対照群なしのその第III相試験ではVX-548使用患者の83%が好転(good, very good, or excellent)したと自己評価しました。慢性痛の用途も目指すVX-548は慢性痛への効果の検討も進んでおり、去年の12月には糖尿病患者の神経痛(糖尿病神経障害)への効果を調べた第II相試験での有望な結果が報告されています2)。点数が大きいほどより痛いことを意味する下限0で上限10の数値的疼痛評価尺度(Numeric Pain Rating Scale:NPRS)が一日一回のVX-548投与で有意に2点強下がり、糖尿病神経障害の治療薬プレガバリンの1日3回投与と同程度の効果がありました。プレガバリンと効果が同程度でもVX-548の1日1回投与は強みになるかもしれません。Vertex社はFDAとの協議の後に糖尿病神経障害へのVX-548の大詰め試験を始める予定です。糖尿病神経障害は末梢神経痛の2割を占めます。Vertex社はさらに患者数が多い腰仙部神経根障害への同剤の第II相試験も昨年の12月に開始しています3)。腰仙部神経根障害は末梢神経痛の実に4割を占めます。装い新たなオピオイド薬も健闘オピオイド薬はとくに慎重な扱いが必要とはいえ、VX-548が勝てなかったことも示すように頼りになる薬として引き続き出番は多そうです。それゆえより安全に使えるようにする取り組みが脈々と続いています。米国のサンディエゴを拠点とするEnsysce Biosciences社が開発している半減期が長いオピオイド薬PF614はその1つで、第II相試験後のFDAとの協議結果を踏まえたうえで今年後半に第III相試験が始まります4)。VX-548の試験でも使われたhydrocodoneとアセトアミノフェンの合剤の製品Vicodinは4~6時間ごとの服用が必要ですが5)、PF614は半減期が12時間と長いので1日2回の服用で事足ります。また、乱用されやすさを確認する試験でPF614はオキシコドンに比べて好まれず、再び使いたいという欲求の程がより低くて済むことが確認されています。米国のオピオイド乱用の惨禍は深刻で、2021年のオーバードーズによる死者10万例(10万6,699例)の75%が処方用オピオイドを含む何らかのオピオイドに関連するものでした6)。ゆえにオピオイドの代わりとして使いうるVX-548やPF614のようなより安全な新しい処方薬の役割は大きいに違いなく、同国のオピオイド惨禍を落ち着けることに役立つでしょう。参考1)Vertex Announces Positive Results From the VX-548 Phase 3 Program for the Treatment of Moderate-to-Severe Acute Pain / BUSINESS WIRE 2)Vertex Announces Positive Results From Phase 2 Study of VX-548 for the Treatment of Painful Diabetic Peripheral Neuropathy / BUSINESS WIRE3)Evaluation of Efficacy and Safety of VX-548 for Painful Lumbosacral Radiculopathy (PLSR)4)Ensysce Biosciences Announces Positive End of Phase 2 Meeting with FDA for PF614 to Treat Severe Pain / ACCESSWIRE5)Vicodin / FDA6)Drug Overdose Death Rates / NIH

5.

不眠症の診断治療に関する最新情報~欧州不眠症ガイドライン2023

 2017年以降の不眠症分野の進歩に伴い、欧州不眠症ガイドラインの更新が必要となった。ドイツ・フライブルク大学のDieter Riemann氏らは、改訂されたガイドラインのポイントについて、最新情報を報告した。Journal of Sleep Research誌2023年12月号の報告。 主なポイントは以下のとおり。・不眠症とその併存疾患の診断手順に関する推奨事項は、臨床面接(睡眠状態、病歴)、睡眠アンケートおよび睡眠日誌(身体検査、必要に応じ追加検査)【推奨度A】。・アクチグラフ検査は、不眠症の日常的な評価には推奨されないが【推奨度C】、鑑別診断には役立つ可能性がある【推奨度A】。・睡眠ポリグラフ検査は、他の睡眠障害(周期性四肢運動障害、睡眠関連呼吸障害など)が疑われる場合、治療抵抗性不眠症【推奨度A】およびその他の適応【推奨度B】を評価するために使用する必要がある。・不眠症に対する認知行動療法は、年齢を問わず成人(併存疾患を有する患者も含む)の慢性不眠症の第1選択治療として、対面またはデジタルにて実施されることが推奨される【推奨度A】。・不眠症に対する認知行動療法で十分な効果が得られない場合、薬理学的介入を検討する【推奨度A】。・不眠症の短期(4週間以内)治療には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬【推奨度A】、ベンゾジアゼピン受容体作動薬【推奨度A】、daridorexant【推奨度A】、低用量の鎮静性抗うつ薬【推奨度B】が使用可能である。利点と欠点を考慮して、場合により、これら薬剤による長期治療を行うこともある【推奨度B】。・いくつかのケースでは、オレキシン受容体拮抗薬を3ヵ月以上使用することができる【推奨度A】。・徐放性メラトニン製剤は、55歳以上の患者に対し最大3ヵ月間使用可能である【推奨度B】。・抗ヒスタミン薬、抗精神病薬、即放性メラトニン製剤、ラメルテオン、フィトセラピーは、不眠症治療に推奨されない【推奨度A】。・光線療法や運動介入は、不眠症に対する認知行動療法の補助療法として役立つ可能性がある【推奨度B】。

6.

術後せん妄予防に対するスボレキサント+ラメルテオンの有効性

 スボレキサントとラメルテオンは、術後せん妄の予防に有用であると報告されている。これまでの研究では、せん妄誘発リスクと関連するベンゾジアゼピン系睡眠薬との比較が報告されているが、睡眠薬未使用患者との比較は、これまで報告されていなかった。静岡がんセンターの池内 晶哉氏らは、がん患者において、術前にスボレキサントとラメルテオンの併用投与を行った場合と睡眠薬未使用の場合を比較し、術後せん妄の発生率を評価した。Journal of Pharmaceutical Health Care and Sciences誌2023年12月1日号の報告。 対象は、2017年4月~2020年6月に静岡がんセンターの肝胆膵外科で手術を受けたがん患者110例。手術の7日前からスボレキサントとラメルテオンの併用を行った患者50例、スボレキサント、ラメルテオンを含む睡眠薬未使用患者60例を分析した。術後7日間、レトロスペクティブに観察し、術後せん妄の累積発生率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・術後7日間における術後せん妄の累積発生率は、スボレキサントとラメルテオン併用患者で7例(14.0%)、睡眠薬未使用患者で22例(36.7%)であり、両群間で有意な差が認められた(オッズ比:0.28、95%信頼区間:0.11~0.73、p=0.009)。 結果を踏まえ、著者らは「がん患者に対する術前のスボレキサントとラメルテオンの予防的併用投与は、術後せん妄の発生率を低下させるために、有効であることを示唆している」としている。

7.

動物病院での猫の不安を軽減する薬を米FDAが承認

 猫を飼っている人なら、猫を獣医師のもとへ連れていくことが猫と飼い主の双方にとっていかにストレスとなるかを経験的によく知っているだろう。米食品医薬品局(FDA)は11月17日、このような猫の不安を軽減する新薬を承認したことを発表した。FDAは、Bonqatと呼ばれるこの抗不安薬は、「移動中や動物病院での診察時に猫が感じる不安や恐怖を和らげるように設計されている」とニュースリリースで説明している。 Bonqatは、過活動状態にある神経を鎮める薬物であるプレガバリンを含む、初のFDA承認薬だ。FDAの説明によると、同薬は、猫を連れて移動するか、または動物病院で診察を受ける1時間半ほど前に経口投与すればよい。投与は2日間連続で可能である。 米VCA動物病院の情報によると、猫の中には、行き先を問わず、移動中に重度の不安を感じたり、ひどい乗り物酔いを起こす個体がいる。そのような猫には、ニャーニャーと鳴く、唇を鳴らす、よだれを垂らすといったものから、ストレスによる乗り物酔いで排尿や排便を起こすものまで、さまざまな症状が現れる。 Bonqatは、この薬を製造するフィンランドのOrion社が実施した実地調査の結果に基づき承認された。試験では、動物病院を受診した際に恐怖や不安を感じたことのある猫の飼い主に、5〜10日の間に2回に分けて猫を診察のために動物病院に連れてくるよう依頼した。初回は、治療前に試験に登録するためのスクリーニング訪問とし、2回目の訪問時には、訪問に先立ち、Bonqatまたはプラセボが猫に投与された。移動中の猫の不安や恐怖は飼い主が、身体診察中の猫の不安や恐怖は獣医師が評価した。 その結果、Bonqatを投与された猫(108匹)の半数強は移動中と動物病院受診中の両方で良好、または優れた反応を示したのに対して、プラセボを投与されたネコ(101匹)では、その割合が約3分の1にとどまったことが明らかになった。さらに、2回の診察の間に恐怖と不安のレベルに改善が認められたのは、Bonqatを投与された猫では77%(83匹)であったのに対し、プラセボを投与された猫では46%(46匹)にとどまっていた。Bonqatの投与により生じた副作用は、軽度の鎮静、運動失調、嗜眠などであった。 FDAは、Bonqatは、人が誤用する可能性があるため、資格を有する獣医師の処方を通じてのみ入手可能と述べている。また、製品を安全に使用するためには、正確な投与量や適切な投与方法などに関する医師の専門知識と監視が必要だとしている。FDAはまた、猫の飼い主に対しても、「薬剤が人の皮膚や目、その他の粘膜に触れないように気を付けるなど、薬の取り扱いに注意する必要がある」と注意喚起している。

8.

回復期リハビリテーション病棟でのせん妄に対する向精神薬の減量

 川崎こころ病院の植松 拓也氏らは、同施設の回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんの多くが、急性期病棟入院時にせん妄に対する向精神薬処方が行われている現状を踏まえ、精神科医、薬剤師、リハビリテーション医が協力し、向精神薬減量への取り組みを行った。その結果から、急性期病棟で処方されている向精神薬の種類および用量を回復期リハビリテーション病棟で減量できる可能性があることを報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月26日号の報告。 対象は、2021年4月~2022年3月に川崎こころ病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した患者88例。診療記録より基本的情報および向精神薬処方状況を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・入院時に向精神薬が処方されていた患者は55例(62.5%)であり、処方薬は2種類(中央値)であった。・退院時に向精神薬が処方されていた患者は41例、処方薬は1種類(中央値)へと有意な減少が認められた(p<0.05)。・入院時と比較した退院時の向精神薬処方量は、レンボレキサントは有意に高かったものの、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、スボレキサント、ラメルテオン、バルプロ酸ナトリウムの処方は有意に低下した(p<0.05)。 著者らは、「この研究では患者数が限られており、患者の特性の違いによる選択バイアスが否定できないため、さらなる検討が必要である」としている。

9.

十人十色の症状・経過を示す多発性硬化症、改訂GLで疾患修飾薬の使い方を示す/バイオジェン

 多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の診療環境は、近年大きく変化している。「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017」の公開後、MSにおいては国際的な診断基準が改訂され(McDonald 2017診断基準)、フマル酸ジメチル(商品名:テクフィデラ)、シポニモド(同:メーゼント)、オファツムマブ(同:ケシンプタ)が発売された。それを受けて約6年ぶりの改訂となる「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023」が2023年9月に発刊された。 そこで、バイオジェンは2023年10月26日に「ガイドライン改訂からみるこれからの多発性硬化症診療」と題し、メディアセミナーを実施した。ガイドライン作成委員会の委員長を務める新野 正明氏(北海道医療センター臨床研究部 部長)が、MS患者が抱える悩みを含めたMS診療の現状と課題、ガイドライン改訂のポイントについて解説した。多様な症状・経過を示し、人生に大きく影響する MSは20~30代での発症が多く、仕事や結婚、出産など人生に大きな影響を及ぼす。同じ症状を呈するMS患者は2人としていないと言われるほど多様な症状を示し、その中には、ウートフ現象(温浴効果)、易疲労感、記憶力や集中力、判断力の低下などの見た目にはわからない症状もある。そのような背景から、MS患者は「学業や仕事に影響しないのだろうか?」「何に気を付ければ良いのだろうか?」「結婚・出産・子育てに影響しないのだろうか?」「いつまで薬を続ければ良いのだろうか?」「まわりにはなかなか理解してもらえない」といった悩みを抱えていると新野氏は指摘した。 このように多様な症状・経過を示し、患者の悩みの多いMSの診療課題として、新野氏は以下を挙げた。1)患者数が少なく、脳神経内科医でも経験することがそれほど多くない。そのため、専門とする医療機関が少なく、都市部に限られることが多い。2)長期にわたる診療・観察が必要であるが、担当医が異動により毎年交替することがあり、そのたびに方針が変更になることがある。3)2000年以降、疾患修飾薬(DMD)が8種類発売されたが、どのような使い分けが良いのか示されていない。4)どのような点に注意してフォローアップすれば良いか、情報が十分に共有されていない。DMDについてアルゴリズムを作成、使用方法を示す これらの課題に対応すべく、ガイドラインが改訂された。今回のガイドラインは3つの章からなり、中核箇所はMindsに準拠して作成された。第1章では、MSの診断では他の疾患との鑑別が重要となることから、NMOSDやMOG抗体関連疾患(MOGAD)などとの鑑別の手助けになるように、中枢神経系炎症性脱髄疾患診断のアルゴリズムが作成された。また、第1章の後半には各治療薬の概説や使用方法が具体的に掲載されたほか、診療において重要な「医療経済学的側面及び社会資源の活用」の項が追加された。 第2章では、MSやNMOSDを専門とする医師でも対応が分かれると考えられる重要臨床課題が5つ選定され、CQとして取り上げられた(MS:3つ、NMOSD:1つ、MOGAD:1つ)。今回設定されたMSに関するCQは以下のとおり。詳細はガイドラインを参照されたい。CQ1:再発寛解型MS(RRMS)の診断早期にナタリズマブないしオファツムマブで治療を開始するのは推奨されるか?(p114)CQ2:高齢MS患者において、DMDを中止することは推奨されるか?(p116)CQ3:二次性進行型MS(SPMS)患者に、オファツムマブとシポニモドのいずれが推奨されるか?(p118) 第3章では、診療上重要であり、エキスパートの間では一定のコンセンサスが得られると考えられる事項などがQ&Aとして取り上げられている。また、第2章と第3章の内容からRRMSの治療アルゴリズムも作成された。具体的には、「再発頻度・MRI活動性・EDSSが高くない、脳萎縮が強くない場合」には、アボネックス、ベタフェロン、コパキソン、フマル酸ジメチルのいずれかで治療を開始し、治療効果が不十分である場合は、ナタリズマブ、オファツムマブへの切り替えを速やかに検討することが記載されている。一方、「再発頻度やMRI活動性が高い、さらにはEDSSが高い、脳萎縮が強い場合」には、ナタリズマブ、オファツムマブによる治療開始を検討し、「再発頻度・MRI活動性・EDSSが高くない、脳萎縮が強くない場合」でも患者の意向等によってはナタリズマブやオファツムマブから開始することも検討することが記載されている。DMDの切り替え、効果不十分の判断は? それでは、DMDの切り替えの判断はどうすべきであろうか。これについても「Q2-6-1:どのような場合に、DMDの切り替えを検討すべきか?」という問いが設定されている。回答の内容としては「DMDの治療効果が不十分な場合や副作用により治療を継続できない場合、治療継続による副作用が懸念される場合には、切り替えを検討する」ことが記載され、治療効果不十分の判定については「DMDを開始した後も再発や障害度の進行が認められる場合や、MRIで新規病変や拡大病変が認められる場合」に治療効果不十分と判定することが記載されたと新野氏は解説した。 MRIの撮像頻度や障害度の進行の評価方法について、新野氏に質問したところ、「MRIについては、未治療の場合やDMD開始の判断をする場合には半年に1回、進行性多巣性白質脳症のリスクがある場合は3~4ヵ月に1回、安定している患者では1年に1回など、患者の状態によって判断する。身体障害については、EDSSの評価を年に1回程度もしくは再発時に実施するほか、歩行が重要な指標になるため、Timed 25-Foot Walk(25フィート歩行に要する時間)の評価、同じ距離を歩くのにかかる時間が延びていないか質問することも有用である。また、認知機能も非常に重要であるため、情報処理能力などを年に1回は評価する必要がある」との回答が得られた。 講演の最後に、新野氏は「患者さんはさまざまな悩みを抱えているため、医療者側の考えやエビデンスを押し付けるのではなく、患者さんの希望も聞きながら患者さんと一緒に治療方針を考えていく必要がある」とまとめた。

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第167回 インフルエンザの早期流行、全国の患者数が急増、早期対応を/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザの早期流行、全国の患者数が急増、早期対応を/厚労省2.利用が低迷する「マイナ保険証」救急医療と生活保護での活用拡大を/政府3.がん治療と仕事の両立、半数以上が困難感/内閣府4.医療・介護連携、主治医もサービス担当者会議に参加を/中医協5.乳幼児健診の公費支援拡大、5歳児と新生児スクリーニングが焦点に/政府6.県立総合病院、患者検体の取り違えで前立腺摘出の医療ミス/静岡県1.インフルエンザの早期流行、全国の患者数が急増、早期対応を/厚労省厚生労働省および国立感染症研究所によると、第41週のインフルエンザ患者報告数が全国平均で1医療機関当たり11.07人となり、注意報基準の10人を超えた。この数字は過去10年で最も早い時期に注意報基準を超えたもので、とくに沖縄、千葉、埼玉などの都道府県で患者数が急増している。感染症専門家は、例年12月以降にこの水準に達することが多いため、今年の流行が異例であると指摘。とりわけ若い世代での感染が多いことから、高齢者での患者数も増加する可能性が高いとの見解を示している。一方、都内のクリニックではインフルエンザの患者が急増し、予防接種の予約が殺到している。特定のクリニックでは、3人に1人以上の患者がインフルエンザに感染しているとの報告もある。この急増を受けて、ワクチンの予防接種が例年よりも早く開始され、多くの市民が接種を受けている。高齢者施設では、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、インフルエンザの流行に対する警戒を強めている。施設内での感染対策は徹底されており、家族の面会制限や職員の定期的な抗原検査などが実施されている。施設関係者は、ワクチン接種を前倒しで行い、予防策を徹底するとともに、感染が確認された場合の迅速な対応を強調している。参考1)インフルエンザの発生状況について(厚労省)2)インフルエンザ患者報告数、全国で注意報レベルに 厚労省が第41週の発生状況を公表(CB news)3)インフルエンザ患者 1医療機関当たり11.07人 注意報基準超える(NHK)2.利用が低迷する「マイナ保険証」救急医療と生活保護での活用拡大を/政府政府はマイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の活用を拡大する方針を固めている。2024年10月には、救急患者が意識不明の際、その医療情報を同意なしで閲覧・活用することができるようになる。また、2024年3月からは、生活保護受給者の「医療扶助」にもマイナカードが活用される予定で、従来の医療券から切り替えられる。マイナ保険証の利用はまだ低迷しており、誤登録トラブルも相次いで発覚している。とくに他人情報の誤登録やマイナトラブルが影響して、実際の利用率は4.7%に止まっている。政府はこれらの問題を解決し、マイナ保険証を全国民に浸透させるための取り組みを続けているが、多くの課題が残されている。参考1)救急時、同意なく情報閲覧の方針 マイナ保険証で政府、24年にも(共同通信)2)来春からマイナカードで受診把握 生活保護受給者に(同)3.がん治療と仕事の両立、半数以上が困難感/内閣府がん治療と社会生活の両立が困難であると感じる人は、国内で半数以上に上ることが、内閣府の最新の世論調査で明らかになった。とくに治療を受けながら働くのは難しいと考える人が53.5%、また、仮にがんになった場合、治療や検査のために2週間に1度は病院に通う必要がある状況で、働き続けられる環境だと感じていない人は54%に達していた。両立が困難と感じる主な理由として、体力的な問題が28.4%と最も高く、次いで代わりの人材の不足や職場の理解の不足が挙げられた。また、がんの緩和ケアについての意識も調査され、治療開始時からの緩和ケアの必要性を感じる人は49.7%に止まり、2007年の調査開始以降初めて半数を切った。緩和ケアは、がん患者の心身の痛みをやわらげるためのもので、診断時からの提供や周知が国のがん対策の指針とされている。これらの結果を受け、厚労省は引き続き治療と仕事の両立や緩和ケアの提供体制の整備、およびその周知を進めるとの意向を示している。参考1)「がん対策に関する世論調査」の概要(内閣府)2)がん治療と両立困難53%、検診率も低下 内閣府調査(日経新聞)3)「がん治療と仕事の両立は困難」と感じている人は半数以上に(NHK)4.医療・介護連携、主治医もサービス担当者会議に参加を/中医協厚生労働省は、10月20日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会で、医師と介護支援専門員(ケアマネジャー)の連携を強化するために、「介護保険のサービス担当者会議へ医師の出席」の義務化を提案した。ケアマネジャーや介護保険の利用者は、サービス担当者会議へ主治医の参加を強く希望しているが、実際の主治医の会議参加率は、地域包括診療料の取得施設で54.0%、取得していない施設では33.9%に止まっている。厚労省は、より的確で質の高い診療機能を評価するために設けられた「機能強化加算」の加算要件に、サービス担当者会議への参加を条件とする提案をしていたが、これに対しては、多様な「意味のある連携」の形があるため、特定の形式に固執することは適切でないとの意見も出されていた。今後、来春の改定に向けて、真の医療・介護連携を実現するために、具体的な施策や取り組みが今後議論される見込み。参考1)個別事項(その3)医療・介護・障害福祉サービスの連携(中医協)2)サービス担当者会議「医師の参加」を必須要件に 「かかりつけ医機能」の報酬、支払側委員(CB news)3)「意味のある医療・介護連携」が重要、「サービス担当者会議への出席」などを機能強化加算等の要件に据えるべきか-中医協総会(1)(Gem Med)5.乳幼児健診の公費支援拡大、5歳児と新生児スクリーニングが焦点に/政府政府は、乳幼児健診における5歳児の健診を公費支援の対象とする方向で検討を進めている。これまで1歳半と3歳児の健診は公費で実施されており、5歳児健診の公費支援導入は、3歳までにみつからなかった発達障害の早期発見を目的としている。また、患者家族の会からは、新生児スクリーニングにSMA(脊髄性筋萎縮症)を対象疾患に追加する要望が提出された。この検査は生後4日頃の新生児の血液を調べるもので、自治体ごとに実施状況に差があるため、全国一律に公費で実施するよう求められている。政府はこれらの健診・スクリーニングの公費支援拡大を通じて、乳幼児期の健康管理の強化を目指している。参考1)「全国一律、全額公費を」 新生児スクリーニング検査の拡大を要望(朝日新聞)2)乳幼児健診、5歳児も公費支援対象に 経済対策に明記へ(日経新聞)6.県立総合病院、患者検体の取り違えで前立腺摘出の医療ミス/静岡県静岡市葵区の静岡県立総合病院で7月に発生した医療ミスが明らかにされた。同病院は、前立腺がんの疑いで行われた検査の際、2人の患者の検体を取り違えてしまい、悪性腫瘍がなかった60代の男性の前立腺を誤って全摘出。一方、悪性腫瘍を持つ80代の男性の治療開始が5ヵ月遅れる結果となった。このミスは、4月に2人の患者が同じ手術室で連続して行われた生体検査(生検)の際に発生。60代の男性は、誤ったデータに基づいて手術を受け、後の病理検査で摘出組織が良性であることが判明。DNA鑑定により、80代の男性との検体取り違えが確認された。60代の男性は手術後に尿漏れなどの症状が出現し、現在も病院での健康管理が続いている。一方、80代の男性は、ホルモン療法を受けている状態。同院は、2人の患者および家族に対して謝罪。再発防止策として、連続での生検を行う場合は患者ごとに部屋を分ける措置や患者のリストバンドと検体容器のバーコード照合などの新しいマニュアルを導入することを明らかにした。参考1)静岡県立総合病院において発生した医療事故について(静岡県)2)県立病院で患者取り違え 前立腺摘出する医療ミス(NHK)3)患者検体取り違え 良性の前立腺摘出 静岡県立総合病院で医療ミス(静岡新聞)

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神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症〔HDLS:hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroid〕

1 疾患概要■ 概念・定義神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS:hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroid)は、大脳白質を病変の主座とする神経変性疾患である。ALSP(adult-onset leukoencephalopathy with spheroid and pigmented glia)やCSF1R関連脳症(CSF1R-related leukoencephalopathy)と呼ばれることもある。本稿では、HDLS/ALSPと表記する。常染色体顕性(優性)遺伝形式をとるが、約半数は家族歴を欠く孤発である。脳生検もしくは剖検による神経病理学的検査により、HDLSは従来診断されていたが、2012年にHDLS/ALSPの原因遺伝子が同定されて以降は、遺伝学的検査により確定診断が可能になっている。■ 疫学HDLS/ALSPは世界各地から報告されているが、日本人を含めたアジア人からの報告が多い。HDLS/ALSPの正確な有病率は不明である。特定疾患受給者証の保持者は、2015年13人、2016年25人、2017年35人、2018年43人、2019年54人、2020年65人と年々増加傾向にある。HDLS/ALSPの有病率が増加している可能性は否定できないが、診断基準の策定など疾患についての認知度が高まり、確定診断に至る症例が増えたことが、患者数増加の要因だと思われる。しかしながら、確定診断にまで至らないHDLS/ALSP患者が依然として少なからず存在すると推察される。■ 病因HDLS/ALSPは colony stimulating factor-1 receptor(CSF1R)の遺伝子変異を原因とする。既報のCSF1R遺伝子変異の多くは、チロシンキナーゼ領域に位置している。ミスセンス変異、スプライスサイト変異、微小欠失、ナンセンス変異、フレームシフト変異、部分欠失など、さまざまなCSF1R遺伝子変異が報告されている。ナンセンス変異、フレームシフト変異例では、片側アレルのCSF1Rが発現しないハプロ不全が病態となる。中枢神経においてCSF1Rはミクログリアに強く発現しており、HDLS/ALSPの病態にミクログリアの機能不全が関与していることが想定されている。そのためHDLS/ALSPは一次性ミクログリア病と呼ばれる。■ 症状発症年齢は平均45歳(18~78歳に分布)であり、40~50歳台の発症が多い。発症前の社会生活は支障がないことが多い。初発症状は認知機能障害が最も多いが、うつ、性格変化や歩行障害、失語と思われる言語障害で発症するなど多彩である(図1)。主症状である認知機能障害は、前頭葉機能を反映した意思発動性の低下、注意障害、無関心、遂行機能障害などの性格変化や行動異常を特徴とする。動作緩慢や姿勢反射障害を主体とするパーキンソン症状、錐体路徴候などの運動徴候も頻度が高い。けいれん発作は約半数の症例で認める。図1 HDLS/ALSPで認められる初発症状画像を拡大する■ 予後進行性の経過をとり、発症後の進行は比較的速い。発症後5年以内に臥床状態となることが多い。発症から死亡までの年数は平均6年(2~29年に分布)、死亡時年齢は平均52 歳(36~84歳に分布)である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)脳MRI検査により大脳白質病変を認めることが、診断の契機となることが多い。頭部MRI所見は、初期には散在性の大脳白質病変を呈することがあるが、病勢の進行に伴い対称性、融合性、びまん性となる。白質病変は前頭葉・頭頂葉優位で、脳室周囲の深部白質に目立つ(図2A、B)。病初期から脳梁の菲薄化と信号異常を認めることが多く、矢状断面・FLAIRの撮像が有用である(図2C)。ただし、脳梁の変化はHDLS/ALSP以外の大脳白質変性症でも認めることがある。内包などの投射線維に信号異常を呈することもある。拡散強調画像で白質病変の一部に、持続する高信号病変を呈する例がある(図2D)。ガドリニウム造影効果は認めない。CT撮像により、側脳室前角近傍や頭頂葉皮質下白質に石灰化病変を認めることがある(図2E)。この所見は“stepping stone appearance”と呼ばれ(図2F)、HDLS/ALSPに特異性が高い。石灰化は微小なものが多いため、1mm厚など薄いスライスCT撮像が推奨される。HDLS/ALSPの診断基準としてKonno基準が国内外で広く用いられている。Konno基準に基づき、厚生労働省「成人発症白質脳症の実際と有効な医療施策に関する研究班」において策定された診断基準が難病情報ホームページに掲載されている(表)。図2 HDLS/ALSPの特徴的な画像所見画像を拡大する両側性の大脳白質病変を認める(A、B:FLAIR画像)。脳梁は菲薄化している(C:FLAIR画像)。拡散強調画像で高信号領域を認める(D)。CTでは微小石灰化を認める(E、F)。表 HDLS/ALSPの診断基準主要項目1.60歳以下の発症(大脳白質病変もしくは2の臨床症状)2.下記のうち2つ以上の臨床症候a.進行性認知機能障害または性格変化・行動異常b.錐体路徴候c.パーキンソン症状d.けいれん発作3.常染色体顕性(優性)遺伝形式4.頭部MRIあるいはCTで以下の所見を認めるa.両側性の大脳白質病変b.脳梁の菲薄化5.血管性認知症、多発性硬化症、白質ジストロフィー(ADL、MNDなど)など他疾患を除外できる支持項目1.臨床徴候やfrontal assessment battery(FAB)検査などで前頭葉機能障害を示唆する所見を認める2.進行が速く、発症後5年以内に臥床状態になることが多い3.頭部CTで大脳白質に点状の石灰化病変を認める除外項目1.10歳未満の発症2.高度な末梢神経障害3.2回以上のstroke-like episode(脳血管障害様エピソード)。ただし、けいれん発作は除く。診断カテゴリーDefinite主要項目2、3、4aを満たし、CSF1R変異またはASLPに特徴的な神経病理学的所見を認めるProbable主要項目5項目をすべてを満たすが、CSF1R変異の検索および神経病理学的検索が行われていないPossible主要項目2a、3および4aを満たすが、CSF1R変異の検索および神経病理学的検索が行われていない鑑別診断としては、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、多発性硬化症、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体顕性(優性)脳動脈症(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarct and leukoencephalopathy:CADASIL)など多彩な疾患が挙げられる。HDLS/ALSPと診断された症例で、病初期に多発性硬化症が疑われ、ステロイド治療を受けた例が複数報告されている。HDLS/ALSPはステロイド治療に効果を示さないため、大脳白質病変と運動症状を呈する若年女性を診察した場合には、HDLS/ALSPを鑑別する必要がある。HDLS/ALSPのための診断フローチャートを図3に示した。臨床的な鑑別診断は必ずしも容易ではなく、遺伝学的検査により確定診断を行う。2022年4月にCSF1R遺伝学的検査が保険収載され、かずさ遺伝子検査室に検査委託が可能である。図3 HDLS/ALSP診断のフローチャート画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)系統的な治療法は確立していない。HDLS/ALSPの経過中に出現する症状に応じた対症療法が行われる。痙性に対しては抗痙縮薬、パーキンソニズムに対して抗パーキンソン薬の使用を考慮する。症候性てんかんには抗てんかん薬を単剤で開始し、発作が抑制されなければ、作用機序が異なる抗てんかん薬を併用する。4 今後の展望HDLS/ALSPに対する造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)が海外で行われている。現在までに15例のHDLS/ALSP患者がHSCTを受けている。HSCTを受けた約4割の症例で臨床的効果を認めている。ドナー由来の細胞がHDLS/ALSP患者脳に到達し、衰弱したミクログリアの機能を補完している可能性が考えられる。ミクログリア機能を回復される治験としてアゴニスト効果を有する抗TREM2抗体薬を用いた治験が海外で行われている。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)かずさ遺伝子検査室(本症の遺伝学的検査を受託している)患者会情報Sister’s Hope Foundation(米国のHDLS/ALSPの患者会の英語ホームページ)(米国の患者とその家族および支援者の会/ホームページは英語)1)Konno T, et al. Neurology. 2018;91:1092-1104. 2)下畑享良 編著. 脳神経内科診断ハンドブック. 中外医学社;2021.3)池内 健ほか. 日本薬理学雑誌. 2021;156:225-229.4)池内 健ほか. 実験医学. 2019;37:118-122.5)池内 健. CLINICAL NEUROSCIENCE. 2017;35:1354-1355.公開履歴初回2023年9月28日

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乾癬の治療法を徹底解説!:日野皮フ科医院 院長 日野 亮介氏

このコンテンツでは、乾癬の治療法について解説していきます。日常診療のアップデートに、ぜひご活用ください。講師紹介多くの乾癬患者さんたちからは、「ずっと同じ薬ばっかりで良くならない」というお声を多く頂きます。乾癬の治療は塗り薬しかない、と思っておられる方も多いかもしれません。しかし、そうではありません。乾癬は治療に苦労する皮膚疾患でありますが、ここ10年ほどで大変多くの治療薬が出てきました。皮膚の症状は大半の方でコントロール可能になりました。今、患者さんの乾癬はどんな状態でしょうか?患者さんのライフスタイルに応じて、適切な治療方針を選ぶための参考にしていただけると幸いです。治療がうまくいかないとき、マンネリ化したときに、次の一手を考えるヒントになってくれると思っております。このページでは、乾癬について保険適用のある治療について解説しています。乾癬には尋常性乾癬、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬、滴状乾癬の5種類があります。薬によって適用が異なりますので、ご注意ください。1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬1-1.ステロイド外用薬ステロイド外用薬は皮膚疾患に幅広く使われていますが、もちろん乾癬にも有効です。今のところ、乾癬に一番多く使われているお薬です。多くの乾癬患者さんは、一度は塗ったことがあると思います。ステロイドは昔からある薬ですが、ここにも進歩があります。ステロイド外用薬の弱点は長期に使うと副作用が出てくる点なのですが、それを和らげるための手だてとしてシャンプーになっている薬が出ました。コムクロシャンプー(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル)というもので、15分だけつける、という方法を用いて副作用を減らす工夫がなされています。また、シャンプーは薬を塗りにくい頭という場所の特性を生かした大変興味深い方法です。なお、ステロイドの飲み薬は乾癬には通常使用しません。長期的なステロイド外用薬の副作用を避けるためにも、ステロイド外用薬単体での長期的な治療は避ける必要があります。治療が長引いてきた場合は方法を見直しましょう。1-2.ビタミンD3外用薬乾癬患者さんの塗り薬で、一番大切なのはビタミンD3です。効果が出てくるまで時間がかかりますが、一度改善すると再発しにくいこと、長期間塗っても副作用が出にくいことが大切なポイントです。ただし、大量に塗ると血液中のカルシウムが増え過ぎて二日酔いのような症状(高カルシウム血症)が出る可能性がありますので、注意が必要です。皮膚の増殖を抑えるのが主な効き目ですが、IL-17という乾癬の皮膚症状に重要な役割を果たすタンパクを作りにくくすることにも役立ちます。1日2回塗ることが推奨されています。カルシポトリオール(商品名:ドボネックス):軟膏マキサカルシトール(商品名:オキサロール):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファハイ):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファ):軟膏、ローション、クリーム1-3.配合外用薬配合外用薬も、ここ10年の進歩の1つです。ステロイドとビタミンD3の2つを配合させた薬がデビューし、乾癬の治療に幅広く使われるようになりました。昔は、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を薬局で混ぜてもらって処方されることが多かったと思います。お薬の性質上、単純に混ぜるだけでは効果が落ちてしまいます。そのため、ステロイドとビタミンD3の両方を使いたい場合は、重ねて塗るか、両方とも特殊な製法で配合した塗り薬を使う必要があります。乾癬の塗り薬が効かない人は、まず混ぜた薬を使っていないか確認する必要があります。国内では、現在2種類の配合外用薬が使用可能です。カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(商品名:ドボベット):軟膏、ゲル、フォームゲル剤があるので頭皮の中に塗るのにも向いています。頭皮の中に塗る際は、意外にベタつくことに注意が必要です。また、フォーム剤もデビューしました。フォーム剤は塗りやすさから海外で多く使われているようです。上手に使わないと飛び散るので注意が必要です。マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(商品名:マーデュオックス):軟膏ページTOPへ2.経口薬2-1.アプレミラスト(商品名:オテズラ)PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素をブロックする薬です。頭痛、吐き気、下痢などの副作用が最初に出ることが多いので、お薬に体を慣らしていくためのスターターパックがあります。副作用は使っていくうちに慣れてくることが多いです。長期的に内服すると体重減少の副作用もあります。効果はゆっくり出てくるので、焦らず使用することが大切です。痒みや関節の痛みにも効果があります。注射薬のような劇的な効果ではないですが、症状が軽くなるので塗り薬を塗るのが面倒な方や小さなぶつぶつがたくさん出ている方には向いています。当院では小さなぶつぶつがたくさん出て塗りにくい方、頭のぶつぶつやかさぶたが治りにくい方、少し関節が痛い方、手足に分厚いかさぶたができて治りにくい方などに使っています。また、生物学的製剤の治療が終了した、もしくは何らかの理由で中断せざるを得なかった方にも使用できます。腎機能が低下している方は、半分の量で内服する必要があります。2-2.シクロスポリン(商品名:ネオーラル)乾癬が出てくるのに重要な働きをするT細胞の働きを抑える薬です。効果は比較的速やかで、量を多くすると生物学的製剤に近いくらいの効果を得ることもできます。ただし、血圧上昇などの副作用があることは注意が必要です。長期間内服すると、腎臓にダメージが起こります。海外のガイドラインでは1年程度の服用にとどめるように勧められています。これらの理由もあり、定期的な血液検査を必要としています。2-3.メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)リウマチではよく使われている薬ではありますが、乾癬でも最近保険適用になりました。リウマトレックスだけがジェネリックも含め乾癬に保険適用となっています。日本皮膚科学会の生物学的製剤使用承認施設でのみ乾癬に使用できます。妊娠計画の少なくとも3ヵ月前から男性、女性とも内服を中断しなければなりません。腎機能障害のある方には使用できません。副作用対策として葉酸製剤を内服することがあります。2-4.エトレチナート(商品名:チガソン)エトレチナートはビタミンA誘導体であり、免疫を落とさないことにより光線療法との併用が可能です。表皮細胞の異常増殖を抑えてくれることで効果を発揮します。唇が荒れる、手足の皮がむける、皮膚が薄くなるなどの副作用があります。催奇形性といって、お腹の赤ちゃんに奇形を起こす副作用が報告されています。そのため女性は服用中止後2年間、男性は半年間避妊することが必要になります。2-5.ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)乾癬性関節炎(関節症性乾癬)に適応があります。JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬という新しいメカニズムの治療薬です。もともと関節リウマチの治療薬として使用されていました。皮膚にも効果があります。15mg錠を1日1回内服します。帯状疱疹のリスクが高まることが知られていますので、この治療薬を検討されている方には事前に帯状疱疹ワクチンの接種を強くお勧めしています。深部静脈血栓症、肺塞栓症といった血栓のリスクが高まります。そのための注意が必要になります。また、生物学的製剤と同様に事前に結核の検査をする必要があります。2-6.デュークラバシチニブ(商品名:ソーティクツ)2022年11月デビューの内服薬です。既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。比較的副作用の少ない薬ですが、TYK2という分子をブロックするJAK阻害薬というジャンルに入っているため、日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設のみで投与可能となっています。成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。ページTOPへ3.光線療法治療の位置付けとしては、寛解導入、すなわち週2~3回程度の細かい間隔で照射し、ぶつぶつをできるだけ消失させるのを最初の目的としています。効果が出て皮膚症状が寛解したら間隔をのばしていく、ないしは中止します。ナローバンドUVBは発がん性が上昇するリスクは今のところ報告されていません。しかし、紫外線であるため、ダラダラと継続して無駄な照射をしないように気を付けることも大切です。ページTOPへ4.顆粒球吸着除去療法アダカラムという特殊な体外循環装置を使い、白血球の一部である、活性化した顆粒球を取り除く方法です。膿疱性乾癬に保険適用があります。薬剤の投与をしないため、妊娠中でも実施できます。ページTOPへ5.生物学的製剤乾癬の治療は、2010年に生物学的製剤が使えるようになってから劇的に変化しました。今までの治療で効果がなかった患者さんも、この薬の投与を開始してから皮膚や関節の症状と無縁の生活を送れるようになってきました。このように非常によく効く薬なのですが、大変高額です。そのため、高額療養費制度の理解や活用も大切になってきます。どんどん薬剤の開発が進み、10年で10種類以上のお薬が乾癬に対して使えるようになってきました。生物学的製剤が使えない方、注意が必要な方活動性の結核を含む重い感染症がある方は使用できませんので、事前にしっかりと検査を行い、必要な対処を行ってから投与する必要があります。また、悪性腫瘍のある方は投与禁忌ではありませんが、投与に当たっては(がん治療の)主治医としっかり相談・確認して慎重に進めなければなりません。現在、乾癬に使える生物学的製剤だけで、こんなにたくさんの種類があります(2023年9月現在)。画像を拡大する(各薬剤の電子添付文書を基にケアネット作成)5-1.TNF-α阻害薬TNF-αというタンパクをブロックする薬です。TNF-αは体のあちこちで作られ、乾癬を悪化させていきます。内臓脂肪からも作られます。メタボ気味の人は内臓脂肪からのTNF-αが増えてきます。すると、インスリン抵抗性といって血糖が上がりやすい状態になってしまうこともあります。これをブロックすることで、全身のさまざまな炎症を抑えてくれることも期待されています。また、関節炎にも効果が高いです。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の症状が進行すると骨びらんという骨へのダメージが来るのですが、TNF-α阻害薬は骨破壊を抑え、回復させてくれる効果が期待できます。インフリキシマブ(商品名:レミケード)唯一、これだけが点滴で投与する薬です。効果不十分時に増量ないし投与期間を短縮することが可能です。アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)2週間に1回皮下注射する薬です。効果不十分時に増量することが可能です。シリンジだけでなく、ペン型の注射器具があるため自己注射が簡単に行えます。セルトリズマブ ペゴル(商品名:シムジア)この薬剤は製法が特殊であり、胎盤をお薬が通過しにくいことがわかっています。そのため唯一、妊娠中でも使える生物学的製剤です。TNF-α阻害薬が使えない人うっ血性心不全のある方多発性硬化症などの脱髄性疾患をお持ちの方TNF-α阻害薬はどんな人に向いている?乾癬性関節炎(関節症性乾癬)で、とくに関節の症状が強い人メタボ気味の人炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の既往がある人体重が重い人インフリキシマブは体重1kg当たり5mgの量を投与します。体重がかなり重い方は十分な薬剤量を行きわたらせるためにインフリキシマブを選択することがあります。5-2.IL-23阻害薬IL-12/23 p40阻害薬のウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)が最初に出ました。IL-23はp40とp19というタンパクが合体しているものです。p40はIL-12という別のタンパクにも含まれている構造のため、IL-12/23 p40阻害薬は乾癬に関係のない細胞の働きも弱めてしまいます。そこで、ウステキヌマブ以降に出た次世代型のIL-23阻害薬は、p19をブロックすることでよりピンポイントな効き目を実現させています。すべての薬剤にある特長は、効果が持続しやすい、投与間隔が長いという点、副作用が少ないことです。ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)2011年から使用されている薬剤です。効果不十分な場合に増量できるのが特徴です。グセルクマブ(商品名:トレムフィア)掌蹠膿疱症にも適応があります。維持投与期は8週間に1回の投与を行います。リサンキズマブ(商品名:スキリージ)維持投与期は12週間に1回という長さが魅力です。チルドラキズマブ(商品名:イルミア)尋常性乾癬のみに適応があります。この薬剤も維持投与期は12週間に1回です。IL-23阻害薬はどんな人に向いている?治りにくい尋常性乾癬の方仕事が忙しくて通院が大変な方自分で注射を打つのが怖い方5-3.IL-17阻害薬IL-17とは乾癬を発症させるのに大変重要な役割を果たすタンパクです。IL-17にはIL-17AからFまでの6つのサブファミリーがあります。とくにIL-17ファミリーの中で乾癬の成り立ちに重要な役割を果たすタンパクが、IL-17AとIL-17Fです。治療効果が早く出ること、そして4種類の薬剤それぞれ非常に高い効果が得られることが特長です。セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブは維持投与期に自己注射をすることが可能です。セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)最初の1ヵ月に毎週注射をすることで効果を早く出せることが特長です。完全ヒト型抗体であり、中和抗体が出にくいのが特徴です。成人には300mgを投与しますが、状況により減量が可能です。生物学的製剤の中で唯一小児にも適応があります。通常、6歳以上の小児にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として、体重50kg未満の患者には1回75mgを、体重50kg以上の患者には1回150mgを皮下投与します。なお、体重50kg以上の患者では、状態に応じて1回300mgを投与することができます。イキセキズマブ(商品名:トルツ)IL-17Aを阻害します。薬剤の特長として高い治療効果が早期から出てくることが多いです。効果がいまひとつだったり、安定しなかったりするとき、つまり使用開始後12週時点で効果不十分な場合には、投与期間を短縮することが可能です。乾癬の皮膚や関節症状が強い方、安定しない方に向いています。ブロダルマブ(商品名:ルミセフ)この薬剤は、乾癬の治療薬ではIL-17の受容体であるIL-17RAをブロックする薬です。そのため、IL-17A、IL-17A/F、IL-17C、IL-17E、IL-17Fが受容体に結合するのをブロックすることができます。皮膚症状に対しては、かなり有効性が期待できる薬剤です。ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)IL-17A、IL-17Fをブロックできる薬剤です。尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)には適応がありません。今までの治療でうまくいかなかった人でも鋭い効果を出すことが期待されています。IL-17阻害薬が使えない方炎症性腸疾患のある方IL-17は腸管のバリア機能を保つために重要な役割を果たします。炎症性腸疾患のある方は、IL-17をブロックすることで悪化する可能性があります。真菌感染症のある方IL-17は真菌(カビ)の防御に大切な働きをします。そのため、これらの感染症がある方は、IL-17をブロックすることで悪化させてしまう可能性があります。IL-17阻害薬はどんな人に向いている?皮膚の症状がかなり重度な方自分で注射を打てる方素早い効果を期待している方5-4.IL-36受容体阻害薬スペソリマブ(商品名:スペビゴ)抗IL-36受容体抗体であるスペソリマブが主成分です。膿疱性乾癬における急性症状の改善、という適応で保険収載されました。投与開始1週後に有意な膿疱の減少、12週後には84.4%の患者で膿疱が消失という劇的な効果を呈することが知られています。ページTOPへまとめ乾癬の治療薬、治療法はたくさんあることがおわかりいただけたと思います。乾癬の治療に絶対の正解はありませんが、いろいろな治し方を知り、治療方針を決めていく参考になればと思っております。乾癬の治療薬は、まだたくさん開発されています。内服薬(RORγtインバースアゴニスト)、外用薬(アリル炭化水素受容体モジュレーター)などが治験中です。今後も多くの治療選択肢ができることで、乾癬患者さんたちの未来は明るくなっていくのではと期待しています。1)森田明理ほか. 乾癬の光線療法ガイドライン. 日皮会誌. 2016;126:1239-1262.2)佐伯秀久ほか. 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版). 日皮会誌. 2022;132:2271-2296.3)各薬剤の電子添付文書

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米FDAが多発性硬化症治療薬のバイオシミラーを初承認

 米食品医薬品局(FDA)は8月24日、再発型の多発性硬化症(MS)に対する点滴静注薬であるタイサブリ(一般名ナタリズマブ)の初のバイオシミラー(バイオ後続品)であるTyruko(一般名natalizumab-sztn)を承認したことを発表した。バイオシミラーとは、FDAがすでに承認済みの生物学的製剤と類似性が極めて高く、臨床的効果に大きな差のない生物学的製剤のことを指す。 Tyrukoの使用は、1)臨床的に孤立した症候群(初めて単一のMS症状が出現した状態)、2)再発寛解型MS(症状が現れる再発と症状が治る寛解を交互に繰り返す)、3)二次性進行型MS(再発寛解型MSを経て、徐々に再発がなくても症状が進行していく状態)の3つのタイプのMSに対して承認された。なお、Tyrukoはタイサブリと同様に、従来のクローン病治療薬やTNF(腫瘍壊死因子)-α阻害薬が奏効しない、あるいは忍容性のない中等度から重度の活動性のクローン病患者において、臨床的な応答と寛解の誘導を目的に使用することも可能である。 FDA医薬品評価研究センター(CDER)のPaul R. Lee氏は、「バイオシミラーは新たな治療選択肢を提供するものであり、Tyrukoの承認は再発型MS患者における治療アクセスを増やす可能性がある。今回の承認は、MS患者が自分の症状をコントロールする上で有意義なものとなるだろう」と述べている。 Tyrukoの承認は、同薬剤とタイサブリとの間に、安全性、純度、力価(すなわち、安全性と有効性)において意味のある差がないことを示すエビデンスに基づいている。Tyrukoやタイサブリを含めたナタリズマブ製剤の添付文書の枠組み警告には、脳のウイルス感染症である進行性多巣性白質脳症(PML)のリスク増加に関して記載されている。FDAは、ナタリズマブ製剤を処方する際には、PML発症のリスク因子である、抗JCウイルス(JCV)抗体の有無、治療期間の長期化、免疫抑制剤の使用歴などを考慮すべきであると指摘している。 このようなPML発症リスクの存在から、ナタリズマブ製品は、特定の制限付き薬物流通プログラムの下で、リスク評価および緩和戦略(REMS)に従って提供される。REMSは、ナタリズマブ製剤を処方する医療専門家とその調剤を担う薬局に対して特定の認定資格を求め、また患者もREMSに登録される必要がある。REMSの要件の一部を挙げると、処方者は初回注入の3カ月後と6カ月後、その後は6カ月ごとに、また治療を中止する場合は中止直後とその6カ月後に、患者を評価する必要がある。 添付文書には、ヘルペス感染、血小板減少、免疫抑制、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応、肝毒性などのリスクに関する警告が追加されている。副作用として最も頻繁に生じるのは、関節痛、尿路感染症、下気道感染症、胃腸炎、膣炎、うつ病、四肢痛、腹部不快感、下痢、発疹である。 Tyrukoの承認はSandoz社に対して付与された。

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第163回 コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省

<先週の動き>1.コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省2.コロナ病床確保料504億円過大支給、医療機関に返還要求/厚労省3.新型コロナ治療薬の自己負担、10月より最大9,000円へ/厚労省4.2022年度、医療費の高騰続く、高額薬の影響で「高額レセプト」過去最多更新/健保連5.出産費用、全国平均で2万円増加、456施設が値上げ/厚労省6.医師の過労自殺問題、日医会長と遺族が働き方改革を訴える1.コロナワクチン接種、来年度も高齢者向けは無料、一般は自己負担に/厚労省来年度の新型コロナウイルスワクチンの接種に関する方針が明らかになった。厚生労働省は、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を9月8日に開き、来年度のコロナウイルスワクチン接種について、65歳以上の高齢者や重症化リスクの高い人を対象に、年1回とする案を議論した。これまで「臨時接種」の位置付けで行われていた無料接種は、今年度をもって終了し、2024年度からは原則自己負担となる見込み。なお、高齢者らは公費助成の「定期接種」として、無料または低額での接種が検討されている。一方、65歳未満の人々は「任意接種」としての扱いとなり、自己負担が必要となる可能性が高い。今回の方針変更の背景には、新型コロナの変異株オミクロンの重症化率の低下や感染症法上の「5類」への移行、さらに抗ウイルス薬の普及などが影響しており、厚労省は接種の目的を「重症化予防」と位置付け、接種時期を「秋・冬」とする案も示している。参考1)第55回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会(厚労省)2)高齢者接種、年1回で調整 来年度コロナワクチン 厚労省(時事通信)3)コロナワクチン、国費での無料接種終了へ 65歳未満は原則自己負担(毎日新聞)4)新型コロナワクチン、無料接種は今年度限りで終了…高齢者らには助成も検討(読売新聞)2.コロナ病床確保料504億円過大支給、医療機関に返還要求/厚労省厚生労働省は2020年度と2021年度の2年間で、新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、病床を確保した医療機関に支払われる「病床確保料」に関して、計約504億円を過大に支給していたと発表した。この過大交付は、岩手と徳島を除く45都道府県の延べ1,536の医療機関で発生。原因として、退院日を空き病床と誤判断して病床確保料を申請した医療機関が多数確認され、その95%以上が制度の誤認識によるものとされている。また、医師や看護師の不足により患者を受け入れられないにもかかわらず、誤って申請していたケースも見受けられた。会計検査院は昨年、病床確保料の過大支給が約55億円発生していたとの報告を公表。これを受け、厚労省は全国の医療機関に対する調査を進めていた。厚労省は、これらの医療機関に対して全額返還を求めている。参考1)病床確保料 国が504億円過大支給…医療機関に全額返還求める(読売新聞)2)コロナ病床確保料、500億円過大交付 医療機関からの返還求める(朝日新聞)3)コロナ患者の病床確保料、過大交付500億円超 制度の認識誤りか(毎日新聞)3.新型コロナ治療薬の自己負担、10月より最大9,000円へ/厚労省新型コロナウイルス治療薬に関する政府の支援策の変更により、10月以降、高額治療薬の費用に自己負担が導入されることが明らかになった。これまで治療薬の費用は全額公費で賄われていたが、今後、窓口負担が3割の患者には最大9,000円、2割の患者では6,000円、1割の患者では3,000円の自己負担が求められる方向で調整が進められている。今回の方針変更では、治療1回当たりの患者負担に上限額を設け、それを超えた分は公費でカバーされる予定。高額な治療薬には、米メルクのモルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)や米ファイザーのニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック)があり、これらの薬価は9万円以上となっている。さらに入院費用の補助も公費支援自体は継続されるものの、10月以降については減額される方針で、これは他の5類感染症との公平性を踏まえて重症患者に重点化される見通し。新型コロナの法的な位置付けが5月に「5類」に移行して以降、医療対応は平時に近付いており、8月時点での新型コロナウイルスに対応する外来は4.9万ヵ所、入院対応可能な病院も7,300病院となっていることが明らかにされた。参考1)コロナ薬、患者負担9,000円 10月以降、低所得者は軽減(東京新聞)2)コロナ治療薬自己負担 “最大”9,000円 来月から(FNN)3)コロナ治療薬、3割負担なら上限9,000円に 厚労省調整(日経新聞)4.2022年度、医療費の高騰続く、高額薬の影響で「高額レセプト」過去最多更新/健保連健康保険組合連合会(健保連)が9月7日に発表した2022年度のデータによれば、1ヵ月の医療費が1,000万円以上となる「高額レセプト」が前年度比275件増の1,792件となり、過去最多を記録したことが明らかになった。この増加の背景には、高額な医薬品の保険適用が大きく影響している。とくに、脊髄性筋萎縮症の治療薬オナセムノゲン アベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ)や白血病など治療薬チサゲンレクルユーセル(同:キムリア)の利用が目立つ。ゾルゲンスマは1億6,708万円で、国内で保険適用されている薬の中で最も高額。上位9位までの患者は主に脊髄性筋萎縮症の治療薬利用者であり、1億円超の医療費を記録している。健保連では、このような高額薬の増加による医療費の膨張を受け、医療の効率化や合理化の推進が必要であると指摘している。参考1)令和4年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要 (健保連)2)医療費月1,000万円以上過去最多 22年度、高額薬利用が増加 健保連調査(時事通信)3)高額レセプト件数8年連続で過去最多 22年度1,792件、健保連集計(CB news)4)2022年度の1か月医療費上位1-9位は脊髄性筋萎縮症患者で各々1億7,000万円程度、1,000万円超レセは1,792件で過去最高-健保連(Gem Med)5.出産費用、全国平均で2万円増加、456施設が値上げ/厚労省厚生労働省は、9月7日に社会保障審議会医療保険部会を開き、出産費用の見える化について議論した。この中で、令和5年7月時点で分娩を取り扱っている分娩取扱施設を対象に行ったアンケート調査の結果、出産育児一時金が2022年12月に原則42万円から50万円に増額された後、出産費用を値上げした医療機関が全国で456施設に上ることが明らかになった。2023年5月時点の出産費用の平均は50万3,000円となり、昨年と比べて約2万円増加していた。値上げの主な理由として、「光熱費などの高騰」が約9割、「一時金の増額で妊産婦の自己負担への影響が少ないと考えた」という回答が半数以上であった。厚労省は、出産費用の「見える化」を目的として、施設ごとの費用内訳を公式ホームページで公開する予定。参考1)出産費用の見える化等について(厚労省)2)出産費用、半数近くが値上げ 「出産育児一時金の増額」も理由に(朝日新聞)3)出産費値上げ、医療機関の26.5% 一時金の増額後に(日経新聞)4)出産費用4月までに増額4割超、厚労省調べ 医療保険部会で、「一時金引き上げに伴い上昇」(CB news)5)出産育児一時金引き上げ後に出産費用値上げは456施設 厚労省(NHK)6.医師の過労自殺問題、日医会長と遺族が働き方改革を訴える神戸市東灘区の甲南医療センターで2022年に26歳の専攻医・高島 晨伍さんが自殺し、この問題では西宮労働基準監督署が、長時間労働が原因として労災認定を行った。そして、高島さんの過去1ヵ月の時間外労働が、国の基準を超える207時間50分だったことが明らかになった。8月31日、高島さんの母・淳子さんは、厚生労働省にて嘆願書を提出し、医師の働き方改革を求め、「医療、行政、社会が協力してほしい」と訴えた。日本医師会の松本 吉郎会長は9月6日の記者会見でこの件を重く受け止め、医師の労働環境改善と再発防止の取り組みを強化するとの考えを示した。参考1)医師の自殺 労災認定 “再発防止に力尽くす” 日本医師会会長(NHK)2)松本日医会長、兵庫県の勤務医過労自殺「大変重く受け止めている」-会見で弔意を表明(日本医事新報)3)「息子の死を教訓に」医師の働き方改革を 甲南医療センター過労自殺の遺族、厚労省に嘆願書(神戸新聞)

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他の睡眠薬からレンボレキサントへの切り替え効果~SLIM研究

 ほりこし心身クリニックの堀越 翔氏らは、他の睡眠薬からデュアルオレキシン受容体拮抗薬レンボレキサント(LEB)への切り替えによる有効性および安全性を評価するため、本研究を行った。その結果、他の睡眠薬からLEBに切り替えることで、ベンゾジアゼピン(BZD)、Z薬に関連するリスクが低下する可能性が示唆された。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2023年5月30日号の報告。 対象は2020年12月~2022年2月に、ほりこし心身クリニックを受診した不眠症患者61例。アテネ不眠症尺度(AIS)、エプワース眠気尺度(ESS)、Perceived Deficits Questionnaire-5 item(PDQ-5)を含む診療記録から得られた臨床データを分析した。切り替え前の睡眠薬には、BZD、Z薬、スボレキサント、ラメルテオン、ミルタザピン、トラゾドン、抗精神病薬を含めた。主要アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のAISスコアの平均変化とした。副次的アウトカムは、LEBへの切り替え3ヵ月後のESSスコアおよびPDQ-5スコアの平均変化とした。また、切り替え前後のジアゼパム換算量の比較も行った。 主な結果は以下のとおり。・LEBへの切り替え後3ヵ月間、平均AISスコアの減少が認められた。 【1ヵ月後】-2.98±5.19(p<0.001) 【2ヵ月後】-3.20±5.64(p<0.001) 【3ヵ月後】-3.38±5.61(p<0.001)・平均ESSスコアは、切り替え3ヵ月間で有意な変化が認められなかった。 【1ヵ月後】-0.49±3.41(p=0.27) 【2ヵ月後】0.082±4.62(p=0.89) 【3ヵ月後】-0.64±4.80(p=0.30)・平均PDQ-5スコアは、切り替え3ヵ月間で有意な改善が認められた。 【1ヵ月後】-1.17±2.47(p=0.004) 【2ヵ月後】-1.05±2.97(p=0.029) 【3ヵ月後】-1.24±3.06(p=0.013)・総ジアゼパム換算量の有意な減少が観察された(ベースライン時:14.0±20.2、切り替え3ヵ月後:11.3±20.6、p<0.001)。

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6月2日 むずむず脚症候群の日【今日は何の日?】

【6月2日 むずむず脚症候群の日】〔由来〕「む(6)ず(2)むず」と読む語呂合わせから、本症とその関連疾患の患者またはその家族などで構成される「むずむず脚症候群友の会」が2008年に制定。関連コンテンツ不眠の原因を探してみよう【患者説明スライド】エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part1内科医のための睡眠障害(6) レストレスレッグス症候群レストレスレッグス症候群におけるプレガバリンの可能性/NEJM

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術後せん妄予防にメラトニン投与が有望~メタ解析

 術後せん妄は、死亡率に影響を及ぼす問題である。術後せん妄の多くは予防可能であり、予防薬としてメラトニン投与が有望であるといわれている。英国・Bristol Royal InfirmaryのJonathan Barnes氏らは、術後せん妄の予防におけるメラトニンの有効性に関する最新のエビデンスのシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、メラトニンは、成人の術後せん妄発生率を低下させる可能性が示唆された。BMJ Open誌2023年3月29日号の報告。術後せん妄の予防におけるメラトニンの有効性を患者1,244例で解析 1990年1月1日~2022年4月5日までに公表された術後せん妄に対するメラトニンのランダム化比較試験を、各種データベース(EMBASE、MEDLINE、CINAHL、PsycINFO)および臨床試験レジストリ(ClinicalTrials.org)から、システマティックに検索した。対象には、成人の術後せん妄発生率に対するメラトニンの影響を調査した研究を含めた。バイアスリスクの評価には、Cochrane risk of bias 2 toolを用いた。主要アウトカムは、術後せん妄の発生率、副次アウトカムは、術後せん妄の期間および入院期間とした。データの合成には、ランダム効果メタ解析を用い、フォレストプロットで図式化した。研究の方法論およびアウトカム測定の概要も調査した。 術後せん妄の予防におけるメラトニンの有効性を解析した主な結果は以下のとおり。・さまざまな外科の専門分野の患者1,244例を対象とした11件の研究をメタ解析に含めた。・7件の研究では、さまざまな用量でメラトニンが使用されており、4件の研究ではラメルテオンが使用されていた。・術後せん妄の診断には、8つの異なる診断ツールが使用されていた。・評価時期は、研究によりさまざまであった。・バイアスリスクは、6件の研究で低く、5件の研究でやや懸念があると評価された。・対照群と比較したメラトニン群の術後せん妄発症に対するcombined ORは0.41(95%信頼区間:0.21~0.80、p=0.01)であった。

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片頭痛患者の血清尿酸値は痛みの強さに影響しているのか

 プリン体の最終代謝産物である尿酸は、抗酸化物質として作用し、酸化ストレスと関連している。血清尿酸(SUA)は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経変性疾患の病因と関連している可能性が報告されている。しかし、片頭痛とSUAレベルとの関連を評価した研究は、これまでほとんどなかった。トルコ・Istanbul Basaksehir Cam ve Sakura City HospitalのYavuz Altunkaynak氏らは、片頭痛患者の痛みの特徴とSUAレベルとの関係を調査し、頭痛発作中および頭痛がない期間における片頭痛患者のSUAレベルを対照群と比較検討した。その結果、片頭痛患者の発作中と発作がない期間のSUAレベルの差は、痛みの強さと正の相関を示していることが報告された。Medicine誌2023年2月3日号の報告。 片頭痛患者78例、病院職員よりランダムに抽出した健康な対照群78例を対象に、プロスペクティブ横断研究を実施した。頭痛の特徴(発作持続時間、痛みの強さ、頻度)および社会人口統計学的特徴を収集した。片頭痛患者では頭痛発作中および頭痛がない期間の2回、対照群では1回、SUAレベルを測定した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者における頭痛がない期間のSUAレベルは対照群より高かったが、その差は統計学的に有意ではなかった。・頭痛発作中および頭痛がない期間のSUAレベルの変化に、性差は認められなかった。・年齢、片頭痛の持続時間、頻度、間隔と痛みの強さの関連を調査したところ、女性の片頭痛患者においてSUAレベルの差は痛みの強さと弱い相関が認められ(p<0.05、R>0.250)、男性の片頭痛患者では中程度の相関が認められた(p<0.05、R>0.516)。・頭痛がない期間と比較した頭痛発作中のSUAレベルの差に痛みの強さとの正の相関が認められたことから、SUAはその抗酸化作用により片頭痛に関与している可能性が示唆された。

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アルツハイマー病薬が抜毛症と皮膚むしり症の症状軽減か

 アルツハイマー型認知症の治療薬として長年にわたり使用されているメマンチンが、抜毛症や皮膚むしり症の症状の軽減に役立つ可能性が、米シカゴ大学精神科学・行動神経科学教授のJon Grant氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、メマンチンが投与された抜毛症や皮膚むしり症の患者の5人中3人で症状の改善が認められたという。詳細は、「The American Journal of Psychiatry」に2月22日掲載された。 Grant氏によると、抜毛症と皮膚むしり症の米国での有病率は3~4%と推定されているという。これらの疾患の患者は、髪の毛などの自分の体毛を引き抜く、あるいは自分の皮膚をむしることがやめられず、実際に体を傷つけるまでそうした行為を続けてしまう人も多い。 米クリーブランドクリニックの情報によると、メマンチンには、脳内に最も多く存在する神経伝達物質の一つであるグルタミン酸の活性を阻害する働きがある。脳内のグルタミン酸の量が過剰になると、神経細胞が過度に興奮する。この状態は、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病、ルー・ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症)、多発性硬化症などの疾患に関与していると考えられている。このほか、グルタミン酸は気分障害や強迫性障害(OCD)との関連も示唆されている。 米国では、メマンチンは中等度~重度のアルツハイマー病型認知症の治療薬として、2003年に米食品医薬品局(FDA)に認可された。現在は、そのジェネリック薬も利用可能である。しかし、一部の精神科医は、OCDの治療薬としてメマンチンを適応外処方することがある。Grant氏は、「OCDは、抜毛症や皮膚むしり症と親類のような関係にある疾患だ」と説明する。このことから同氏は、グルタミン酸に影響を及ぼすメマンチンのようなアルツハイマー型認知症の治療薬が、抜毛症や皮膚むしり症の治療に有効なのではないかと考えた。 そこでGrant氏らは、抜毛症や皮膚むしり症の成人患者100人(女性86人、平均年齢31.4歳)を今回の臨床試験に登録し、8週間にわたってメマンチン(10〜20mg/日)を投与する群とプラセボを投与する群にランダムに割り付けた。このうちの79人が試験を完了した。その結果、症状が「大きく改善、または極めて大きく改善」した患者の割合は、プラセボ群ではわずか8.3%(3/36人)であったのに対して、メマンチン群では60.5%(26/43人)に達した。ただし、皮膚をむしったり体毛を引き抜いたりする行為を完全にやめることができた患者の割合は、プラセボ群で1人、メマンチン群でも6人にとどまっていた。 この結果についてGrant氏は、「メマンチンによって皮膚をむしるなどの行為は減ったが、完全にそれをやめられた患者は多くはなかった。ゆえに、同薬にはある程度の効果はあるが、完璧ではないのかもしれない」との見方を示している。 またGrant氏は、「今回の臨床試験で得られたポジティブな結果は、これらの疾患へのグルタミン酸の関与を示したものだと言える。ただし、最善の治療法を見出すためには、今後さらなる研究が必要だ」と話す。その上で同氏は、「格好のスタート地点となる研究結果が得られたと考えている」と前向きな姿勢を示し、今後の検討課題として、メマンチンの使用量の増量、効果が得られやすい患者の特定、あるいは他の薬剤や行動療法との併用などを考慮する必要性に言及している。 一方、米ニューヨーク・プレスビテリアン病院およびワイル・コーネル・メディスン精神科学教授のKatharine Phillips氏も、グルタミン酸をコントロールすることが抜毛症や皮膚むしり症の治療の鍵となる可能性があるとの見方を示す。同氏自身も、実際にこれらの疾患の治療でメマンチンを使用することがあるという。 Phillips氏は、「私にとってメマンチンは、抜毛症と皮膚むしり症に対して使用する2種類のファーストライン治療薬のうちの一つだ。これらのグルタミン酸調節薬は、特に強迫観念や反復的な強迫行動を特徴とする障害に対して有用な可能性がある」と説明。また、抜毛症や皮膚むしり症に対する効果が証明されている習慣逆転法にメマンチンを組み合わせる治療法も考えられるとしている。

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急性非特異的腰痛への鎮痛薬を比較~RCT98件のメタ解析/BMJ

 1万5千例以上を対象とした研究が行われてきたにもかかわらず、急性非特異的腰痛に対する鎮痛薬の臨床決定の指針となる質の高いエビデンスは、依然として限られていることを、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMichael A. Wewege氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、報告した。鎮痛薬は、急性非特異的腰痛に対する一般的な治療であるが、これまでのレビューではプラセボと鎮痛薬の比較で評価されており、鎮痛薬の有効性を比較したエビデンスは限られている。著者は、「臨床医と患者は、鎮痛薬による急性非特異的腰痛の管理に慎重となることが推奨される。質の高い直接比較の無作為化試験が発表されるまで、これ以上のレビューは必要ない」とまとめている。BMJ誌2023年3月22日号掲載の報告。無作為化比較試験98件、1万5千例以上について、ネットワークメタ解析 研究グループは、Medline、PubMed、Embase、CINAHL、CENTRAL、ClinicalTrials.gov、clinicaltrialsregister.eu、World Health Organization's International Clinical Trials Registry Platformを2022年2月20日時点で検索し、急性(6週未満)の非特異的腰痛を有する18歳以上の患者を対象とした鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、パラセタモール[アセトアミノフェン]、オピオイド、抗けいれん薬、骨格筋弛緩薬、副腎皮質ステロイド)の無作為化比較試験(他の鎮痛薬、プラセボ、または未治療との比較)を特定した。 主要アウトカムは、治療終了時の腰痛強度(0~100スケール)、安全性(治療期間中のあらゆる有害事象の報告例数)。副次アウトカムは、腰部特異的機能(0~100スケール)、重篤な有害事象、治療中止とした。2人の評価者が独立して試験の特定、データ抽出、およびバイアスリスクの評価を行い、ランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。エビデンスの信頼性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis method)を用いて評価した。 無作為化比較試験98件(合計1万5,134例、女性49%)が特定され、69種類の薬剤または組み合わせが解析に組み込まれた(単剤療法42種類、併用療法27種類)。有効性に関するエビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」 tolperisone(平均群間差:-26.1、95%信頼区間[CI]:-34.0~-18.2)、aceclofenac+チザニジン(-26.1、-38.5~-13.6)、プレガバリン(-24.7、-34.6~-14.7)およびその他の14種類の薬剤は、プラセボと比較して疼痛強度が低下したが、エビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」であった。同様に、これらの薬剤の一部は有効性に有意差がないことが報告されたが、エビデンスの信頼性は「低い」または「非常に低い」であった。 安全性については、トラマドール(リスク比:2.6、95%CI:1.5~4.5)、パラセタモール+徐放性トラマドール(2.4、1.5~3.8)、バクロフェン(2.3、1.5~3.4)、パラセタモール+トラマドール(2.1、1.3~3.4)が、プラセボと比較して有害事象が増加する可能性があるが、エビデンスの信頼性は「中程度」から「非常に低い」であった。これら4種類の治療には、他の治療と比較して有害事象を増加させる可能性があるというエビデンスの信頼性が「高い」から「非常に低い」データもあった。副次アウトカムおよび薬剤クラスの2次解析でも、エビデンスの信頼性は「中程度」から「低い」ことが示された。

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